
風景にならなかったものたち
— Things That Never Became Scenery
風景になれなかったもの
— Objects Beyond the Landscape
Vol.2
隣の席の人がカップを落として割ってしまいました。急に終わってしまったカップの時。わたしは手紙を書いていた手を止めました。
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カフェで手紙を書いていた。
それは前にも後ろにも進まない話で、終わらないひとり語りは、テーブルの上に何枚も重ねられていった。
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隣の席では、向かい合った2人が途切れることなく会話をし続けている。
しかしひとつひとつの話にはちゃんと区切りがあり、それは話を聞こうとしなくともじゅうぶんわかった。
目の前にあるのは、冷めた紅茶、ほんの少し残ったケーキ。
途中のものたち。
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紅茶が運ばれてきた時、カップが床に落ちて割れてしまいました。
カップには大きな花が描かれていましたが、それは紅茶とともに粉々に散りました。
散った花びらは手早く拾われ、あっという間に消え去りました。
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終わらない手紙は何枚も重ねられ、隙間には影が生まれていた。
ただ、小さな花がプリントされた便箋だけが、その話の行き先をほんの少し明るく照らしていたかもしれない。







