endless summer

夏のおいてけぼり。

pool

真夜中のプールには誰もいなくて、わたしと彼女のふたりだけ。

ta too

タ・トゥーは旅に出ると言ってある日突然いなくなってしまったが、たくさんの桃を置いていったから、その香りの足跡がはっきり残っていて、それをたどってすぐに居場所を見つけられてしまう。

another story

また別の物語。

lemon and ginger

ティーバッグのお茶はジンジャーがしっかり効いていて、それはひりひりするくらい。

another scene

またもうひとつの景色。

secret of my secret

閉じ込められて動けない。

a piece of

自転車が大きくカーブを曲がる時、カゴの中の入れていた水筒が外に落ちそうになって、思わず手を伸ばしてみたけれど。/ 約束の時間には到底間に合いそうになかったが、遅れるということを伝える手段もなく、心の中でひたすら謝り続けるしかできなかった。/ 薄い黄緑色をしたお茶は、クリアな見た目とは違って、しっかり口の中に風味が残る。その余韻。/ 雨が勢いよく降ってきて、その激しさに彼は怖いと言って立ち止まる。/ その断片は、断片以上でもなく断片以下でもないから。

hwyl

久しぶりに纏うのは、ベチバー、フランキンセンスの香り。

lemon cream tart

レモンクリームのタルトは、すっぱくて甘くてずっしりと重さ。その鮮やかな浮かれた太陽には、しあわせと呼ばれるものがみっちり詰まっていたが、それはわたしのどこかおぼろげなところから、チクリとする痛みを引っ張り出す。

刺さった針を抜くために、お茶を何煎も重ねた。しかしどれだけしっかり濃く出しても、その痛みはまるで消えなかった。そこには暗くて苦いお茶の入ったカップが、ただただ並んでゆくだけ。

because of summer

because of summer / 夏のせい (2016)
002 … 冷静と情熱

衝動
秘密
緊張
沈黙
麻痺
刹那

the sun always shines on you

少年は、隣の家に越してきた双子の少女と自転車に乗って川へ泳ぎに出かけるが、途中でタイヤがパンクして動けなくなってしまう。すぐに少女の一人が助けを求めに街へ戻ったものの、いっこうに帰ってこない。残された二人は熱い日照りの中、隠れる場所もなく、ひたすらくたびれてゆく。次、もうひとつなにか動きを取る方がいいのか、それともおとなしく待つ方がいいのか。彼らはそれを決めかねていた。しかし太陽はその様子を、ただじっと見ているだけだった。

silent night

開け放たれた窓からは微かにカーテンを揺らす風以外なにも入ってこない静かな夜、一日太陽を浴びて頬がじんわり火照ったままのわたしは、鈍い痛みを頭の奥に感じながら少し高揚している。

a room 20

その時なりの精いっぱいが並ぶ。

Come inside. it’s cold outside.

外では雨がずっと降っていて、食べかけのビスケットはあっという間に柔らかくなってしまった。水っぽい世界は、あらゆるものの形をぼんやりさせる。ソファに寝転がり、夢なのかそうでないのかわからない景色を眺めながら、曖昧な紙で作った船を目の前に浮かばせた。船は見知らぬ時へと流れはじめる。だが、その行方を追いかけることはできない。

dear

扉を開けたら懐かしくそしてクスッと微笑んでしまうようなかわいらしい匂いがして、彼女と「思い出すね、なんだか幸せな心地だよね」と言いながら階段を登った。あの時なにがそんなに伸び伸びしていたのか、今考えてみてもよくわからないけれど、あの夏は本当にあの時しかない夏だった。

summer is here

長いトンネルを抜けると、すぐそこまで夏がやってきていました、そして…。
スピーカーから流れる言葉の続きは、旧いアルバムに並ぶ夏から選ぶことにする。

archive 20160609

Non omnia possumus omnes
we can not all do everything.
(Virgil, Eclogues VIII, 63)
私たちは皆、すべてのことができるわけではない
(ウェルギリウス『牧歌』第8歌(63行))

experiment

今日は何度アイスティーを作ったことか。

a girl

a girl, a boy

さっき前を通ったコーヒーショップに、懐かしい顔を見かけたような気がした。もう何十年も前のことだから、ひょっとしたら間違いなのかもしれないけれど、ほとんど消えている記憶に年月を足した姿は、あんな感じになっているようにも思えた。
あの子がコーヒーを好きなのかどうかは知ることもなかったが、あの頃はメロンの味のするソーダをよく買っていた。わたしたちはそれを寒い冬でも飲んでいて、たいして温かくもないコートを着ているだけの薄っぺらい格好に、素足を放り出し、さむいね、さむいね、と言いながら、冷たいコンクリートの階段に座って、延々となんでもない時間を過ごした。それはとっても軽薄で、もうちっとも思い出せないくらいの。
わたしはなにかで空白を埋めることに慣れてしまった。まともに見えないメガネをかけ、何重にもジャケットを羽織り、コーヒーショップに入っても、窓の外すら眺めない。メロンの味より、メロンそのものがいいに決まっていると言い切って、ソーダを蓋も開けずに、ダストボックスに放り込むのかもしれない。
コーヒーショップに居た(かもしれない)あの子は、なにを飲んで、なにを見ていたのだろう。メロンの味のソーダを飲んでいてくれたらと、勝手なことを願いながら、わたしは来た道を引き返す。