20250508

小瓶は割れていた。手紙には見覚えのない折り目がついていた。分解した椅子は、もう一度組み立てることができなかった。元に戻らないものばかりだった。変わらない部屋の中で、それらはわずかに空気を揺らした。それまで見えていなかった景色が、おぼろげな輪郭を浮かび上がらせる。空気の奥に知らない香りを見つける。ふいに、猫が顔を上げた。