激しい雨の後、太陽に照らされた窓はずいぶん汚れている。新しいコーヒーショップが家の隣にオープンした。曇った窓の向こうに、いつもより少し多い人の行き来を眺める。
she is on
昨日開いたページには後悔の言葉が書かれてあって、今日開いたページには謝罪の言葉が書かれてあった。
明日読むページには大いなる不安の言葉が書かれてある。
彼女はその詰まった思いの数々を一瞬は気にした様子だったけど、すぐにずかずかその上を歩いたと思ったら、さらにそのまま座り込んでしまった。
lemon to
レモンの味のするリンゴを持ってきたよと言われたけれど、わたしはリンゴの味のするレモンが欲しかったのに。
market in the morning
朝のマーケットに遅刻したら、やっぱりどこのお店ももうけっこう品物がなくなっていた。おまけに温かいフードのいい匂いが向こうのほうからしてくる。思わずそちらの方へ引き寄せられそうになったけれど、そうではなく、わたしはまず食材を買わねばならないのだった。ひととおりぐるっと見回したら、いくつかのお店でいくつかの野菜を、果物を、そして卵を。はじまりの活気も落ち着き、人もまばらになったマーケット。それはそれでいろいろ要領が悪いわたしにはいいのかもしれない、というのは、偶然の新しい発見だった。
spring
さっきティーポットに入れたお湯はもうとうに時間を過ぎているのに、放って置かれたままになっている。きっとお茶は苦くなっているだろう。
short short
部屋の窓はまだほとんど閉じられていたが、新しい季節がその隙間からそっと入り込んできていた。郵便物を取りに外に出たら、馴染みのあるあのちょっぴり悲しい生温かさとチリチリする砂混じりの風を、まったくの無防備で思い切り浴びてしまう。思わず眩暈がして、しばらくその場に立ち尽くした。
one day I miss you
one day
20240210newmoon
扉をノックする音が聞こえたので開けてみたら、さっき帰ったばかりの彼女だった。乗るはずだったバスに遅れてしまったと言う。外は冬の冷たい雨がしっかり降っていた。彼女はコートに付いた水滴を払い、小さなストーブに手をかざして、もう少しだけ話していってもいいかと尋ねた。もちろん、とわたしは言って、やかんを火にかけた。
osoi
今日の雨は冷たく重かった。ポットのお茶はすぐに飲み干して、また作らなければならない。窓一枚を隔てた外との距離は雨のおかげでとても近く、耳を澄まさなくとも心地よく庭の色が聞こえてきた。霞んだ小さなその場所は目を閉じると大きな森へ繋がっていた。土はぬかるんでいた。さりげない、忘れていた、しょうもない、そんなことがかつてあった。
morning morning
おそいおそいおそい朝ごはんには
やさしいやさしいやさしいコーヒー
ちいさなちいさなちいさなクッキーが
はみでてはみでてはみでて置かれる
lemonade
できあがったシロップはとても甘くちょっと口の中がもたついてしまうくらいでどうしたものかと思ったけれど、彼女はぜんぜん平気なようだった。
rain
窓の外の景色は霧でよく見えなくて、なんとも幸せな朝だと思う。
lemon sirop
a cat
雨上がりの駐車場には泥でできた猫の足跡があった。それは端まで行って池のところで終わっていたけれど、まさか水の中に入ったわけではないだろうね。
new place
鍵が空いているようだったので入ってみたけれど、誰もいなかった。
long time no see
long time no see
now and then
べつにたいした茶葉でもありませんが、あたたかくいれましたのでよかったらどうぞ飲んでください。いろいろ堅苦しくしないという、堅苦しさが逆にありますね。申し訳ありません。なんてことないのです。ほんとうになんてことないのです。
meeting
待ち合わせは、遥か遠い森の中。
rainy day
気づけば外は雨が降っていて、日も暮れかけていた。
see you
またね。