next new moon in March 2020

New Moon in March 2020

“ science for the living “

どんどん明るい時間がのびてきます
どんどん太陽の光が柔らかくなってきます
日常が少しずつ外へ向かおうとし
考える時間から動く時間へと変わっていきます

扉を開けてみたり
眠っている友達を起こしてみたり
氷を割って水をすくいあげたり

そんなわたしたちのそばに
いてほしいな、と思うもの
集めたいと思います

BLUE

どうやら風邪をひいてしまったようで、頭が痛くてぼんやりしているのと、鼻水が止まらないのと。世の中はとてもピリピリしているから、ベッドの中でコッソリ咳き込む。青い光を放つコップ、今日溶かす青いドロップは、しかくにしよう。いちばんトロリとしていていちばんのどに優しくて、そして少し体が暖かくなる。
明日目が覚めた時は、少し楽になってるかしら。

新月の少し前

梅を眺めていた。
薄い薄いピンクの花の中に、はっきりとしたピンクの花が時折混じっている。なんでかな。
おしゃべりしながら散歩していたら、遅刻してしまった。

りんごの食べすぎ

必要な分だけいただいたらあとは肥やしに。

spring has come

すっかり春めいて。
誰かが風邪をひいているから、その風邪を小さくもらって、頭があまり働かなかったり、寒すぎたり、たくさん眠ってしまったり。
遠くに春の水をもらいに出かけるというので、それについて行ったり。
春の水は雪解け水から。

BLUEが散財する部屋

昼は春の光、夜は月の光。どちらも柔らかくピントが少し緩くなる。ブローチ(ドロップ)を溶かして飲み干すブルーのグラスはしっかりとした濃い青がズンとお腹の底まで落ちる。ある画家からやってきた水差しは絵を描かないわたしには宝の持ち腐れだけれど、気の抜けた春らしい青は眺めているだけでもじゅうぶんな存在。青い鳥たちが住処にする瓶はやはり青い影がきれい。影のための瓶。

a room with a view

小さな香りを立ち上らせる装置。
蒸発皿が小さすぎるのと、火元との距離が近過ぎるので、よそ見しているうちに水がなくなってしまうような、ちょっと危なっかしい、小さな装置。

“Wintersong” : dakota suite & quentin sirjacq

20200202のBLUE

ふかふかワニのたまごは、たんこぶが重くてどう転がしてもたんこぶが下に落ち着く。このエッグスタンドあってようやく立ちます、という感じ。たぶんこの中でまだ眠っているワニの赤ちゃんが落ち着いて寝られるように、たんこぶによって向きを固定するようになっているんだろう。

ふかふかワニ博士が家の近くに住んでいるので、たまごはもちろん、生まれたての赤ちゃんふかふかワニから大人になったふかふかワニまで、実はいろいろ見ている(なかなかこんなに見ている人は普通はいないと思う)。そしてピンクのたんこぶができるたまごがあることも知っている。ピンクのたんこぶ、それはその年の春一番に生まれるふかふかワニについていて、そう、今ちょうどそれをそろそろどこかで見かける時季になってきているはずなのだ。

雪原に光る青い粒

青い本の上に転がる青い粒。
青の裁縫箱の中にしまわれている。
青い糸に青いハサミ、青いピンクッションと青いボタン…。

この部屋は北向きなので太陽の動きがはっきりわかるような他と違い、一日中同じようなゆるい明るさ。窓から見える景色は大きな川と川の向こう岸、ずいぶん遠くに見える建物。毎日のように誰かが川遊びをする。

北向きの窓からの柔らかい光を感じながら眺めるモノたちはうっすらと影があり、そして彼らはいつも何か語りたそうにしている。

夏と違い冬は夕暮れもそれほど色づかない。
空がピンク一色になるのは空気の中にたくさんの水の粒を含んだ暑い季節。
今の時期はあっという間に真っ暗になる。

Antti Nurmesniemi

定番のポットを見つけたのは、ぎゅうぎゅうに器が並んでいた、でもとても整然としたガラス張りの店。
やや神経質そうなマダムは、わたしが入るなり「それ危ないから下ろして…」とリュックサックを指し、もちろん、とわたしはそれをすぐに床に置いた。店の中はヴィンテージの名のある器ばかりで、おおよそわたしが探しているようなものはなかったけれど、やっぱりこのポットを見つけたら(それもこの色だったし、小さいサイズの方だったし、とても状態はよかったし)持って帰りたいと思ってしまった。他にかわいいものたちをいくつか。帰る頃にはマダムは陽気に喋るようになっていた。

小さな街は歩いて回るのに十分な大きさで、さっき歩いたところをまた歩いたりする。今日は休業なのか誰もいないオフィス、ここもガラス張りだから中がよく見えた。ちょっとした飲み物が用意できるというくらいのミニマムキッチン、このポットの赤が置かれていた。現役なんだろう。

雪を作る話 – 中谷宇吉郎

雪を作る話 – 中谷宇吉郎

これは本当に天然に見られるあの美麗繊細極まる雪の結晶を実験室の中で人工で作る話である。零下三十度の低温室の中で、六華の雪の結晶を作って顕微鏡で覗き暮す生活は、残暑の苦熱に悩まされる人々には羨やましく思われることかも知れない。
雪の結晶の研究を始めたのはもう五年も前の話であるが、あり合せの顕微鏡を廊下の吹き晒らしの所へ持ち出して、初めて完全な結晶を覗いて見た時の印象はなかなか忘れがたいものである。水晶の針を集めたような実物の結晶の巧緻は、普通の教科書などに出ている顕微鏡写真とはまるで違った感じであった。冷徹無比の結晶母体、鋭い輪廓、その中に鏤りばめられた変化無限の花模様、それらが全くの透明で何らの濁りの色を含んでいないだけに、ちょっとその特殊の美しさは比喩を見出すことが困難である(つづく)。

white and blue

もうずいぶんと昔の話。白と青。そしてその間のこと。

「何も見なくていいし、何も聞かなくていいから、雪が好きなんだと思いますよ」。そう言われて附に落ちた。その頃のわたしには世界はうるさすぎた。目を閉じて耳を塞ぐ必要があった。