
絡み合う痕跡
できたてのレモンシロップで、わたしはホットレモネードを作ったけれど、あなたはソーダをグラスに注いだ。強すぎる刺激なのか、冷たすぎるのか、ソーダを口にするその表情はなんとなく不機嫌そうに見えた。交わされる言葉もないままに、わたしの手の中の温かさと、あなたの持つ冷ややかさは、さらにお互いの距離を広げる。レモンシロップはどちらの味にも染まることができず、そのぼんやりした甘さを二人の間にそっと落とす。

絡み合う痕跡
できたてのレモンシロップで、わたしはホットレモネードを作ったけれど、あなたはソーダをグラスに注いだ。強すぎる刺激なのか、冷たすぎるのか、ソーダを口にするその表情はなんとなく不機嫌そうに見えた。交わされる言葉もないままに、わたしの手の中の温かさと、あなたの持つ冷ややかさは、さらにお互いの距離を広げる。レモンシロップはどちらの味にも染まることができず、そのぼんやりした甘さを二人の間にそっと落とす。

森のすべてがじっと耳を澄ませているような静けさの中で、わたしだけが音だった。落ち葉を踏み締め、白い息を吐き、時々立ち止まっては木の肌にそっと触れた。それでも森は、その音を飲み込み、わたしを消していった。

わたしははじまりの黄色い実を握りしめていて、それはわたしを示すサインだった。向こうから小さな巾着袋を持って歩いてくる人が見える。その袋の膨らみは約束の赤い実が入っているようだった。未熟なわたしの果実は、チクリと手を刺す。そして小さく震えた。
繋いだ手を離してから、わたしの手は冷たく凍ったままだ。あの時くれた手袋は、かすかな温もりと大きな指の形が残っていたが、そこにわたしの居場所はなかった。隙間にはひんやりとした風が流れた。手袋越しの世界は、曖昧で触れられない。ふうっと息を吹きかけても、温かくなるはずがなかった。

まだ夜は明けていなかった。ケトルからのぼる湯気と、あと少しだけ残っている深煎りのコーヒー豆、ほどよく色が褪せてきたアンティークのカップ。それは季節がどれだけ変わろうと、変わらない景色。
あの人が泊まった次の朝は、必ずこの豆でコーヒーを淹れてくれた。慣れた手つきでお湯を豆に注ぎながら、精霊がこしらえた豆の話だとか、ある村で呪われた豆を焙煎してしまった商人の話だとか、いつもちょっとおかしな話をした。わたしはコーヒーがあまり飲めなかったが、その霞がかった話に包まれる朝だけは、苦さはふっと姿を消した。
まだまだ話は尽きないよ、あなたが自分でコーヒー淹れられるまではね、そう言っていたのに、ある日話はそのまま途切れた。それきりだった。
誰かと待ち合わせているわけではなかった。そこに行かなければいけないわけでもなかった。今日も空白をなんとなく埋めているだけだった。あらかじめは後ろ回しに、決まっていることなど実はなく、それならばそのまま引き返してもよかった。
それでも。
新しく作った眼鏡は、遠くが見えなかったが近くも見えない。

夕方の霞んだ空気は徐々に光と色を失い、冷たくなりつつあった。膨らみきれなかった中途半端な風船たちは、部屋を覆う淡い影と交わり、その輪郭をさらに曖昧にしていった。
ほんの息一つでコロコロ転がり、手を伸ばしても届かなくなる、ほとんど感じられないほどの静かな距離。明日にはしぼんで消えてしまう、今だけそこにある重さ。どうしてもそれは掴めない、掴まない。
虚ろな入れ物に潜ませたその秘密は、誰にも打ち明けられないまま満ちていき、そして欠けていく。
そんな不確かであることだけが確かだということ。
one day someday

大事なことはまだ知りません。
わたしの積み重ねを、いくつか本棚に忍ばせる。読み返す時がこの先あるのかわからないまま、誰かの考えや誰かの思いの中に、それらをそっと埋もれさせた。あの日の記憶はゆっくりと、彼らの言葉と混ざり合い、曖昧なものになりながら、やがて溶けていくだろう。そしてそれはまたいつか、まるで違うものとなり、まったく新しいものとして、誰かに語られることになる。



どれだけ磨いても消えることのない泡。その向こうに見える景色は頼りなく歪んでいたが、ただ、そこにあるだけだった。しかしわたしの不確かな泡は目を凝らし、なにかを見ようとした。
there is there is there is there is there is there is there is there is there is there is there is…
ここよりも美しい場所があるのだろうか。


お勉強している、らしい。

わたしはサンの教室の手伝いをしていて、ムーンはその生徒だった。今日はスコーンの作り方のレッスンで、ムーンはもともとお菓子作りが好きだったらしいから、スコーンも自分であれこれ作った時の話をとても楽しそうにしてくれた。ただサンはまるでその話には興味がなかったようで、彼女の話の最中にも関わらず、さっさとレッスンを始めてしまった。レッスンの途中、ムーンは自分の経験からの質問をしたが、サンはただただ自分の作り方の話をするだけで、おおよそ質問の答えには程遠いものだった。しかしムーンは自分の言葉を飲み込み、そのサンの話を熱心に聞き入っていた。/ サンはひょっとしたらムーンにとって素晴らしい講師なのかもしれない / ムーンはサンに対して疑問を持ったのかもしれないし、持つはずがないのかもしれない / わたしはスコーンの作り方にはまるで興味がない / サンは持てる技術の全てをムーンに渡そうとしていたのかもしれない / わたしはサンの作るスコーンがおいしいと思う / サンのその教える横顔はとても穏やかで暖かい / ムーンはこの作り方でこれから作っていくのだろうか / ムーンがサンの話をとても真剣に聞く後ろ姿をわたしは見る / 紅茶をわたしは用意する / わたしは自分の小さな世界に展開されるあれこれに思わず泣きそうになる。


夜更けに向かっていろいろ質問してみる。

blue, blue, blue

こたえは次の青い疑問を呼び起こします


和解、小さな収穫。色とりどりの玉、カラカラと軽い音を立てて転がる。こぼれ落ちた実、ほとんどは食べられてしまった。お茶を淹れてじっくりと見つめてみたかったけれど、そんな思い通りに行くはずはない。一人分だけの滑稽な形。名残惜しくそのまま置いておく。