20241017

わたしはサンの教室の手伝いをしていて、ムーンはその生徒だった。今日はスコーンの作り方のレッスンで、ムーンはもともとお菓子作りが好きだったらしいから、スコーンも自分であれこれ作った時の話をとても楽しそうにしてくれた。ただサンはまるでその話には興味がなかったようで、彼女の話の最中にも関わらず、さっさとレッスンを始めてしまった。レッスンの途中、ムーンは自分の経験からの質問をしたが、サンはただただ自分の作り方の話をするだけで、おおよそ質問の答えには程遠いものだった。しかしムーンは自分の言葉を飲み込み、そのサンの話を熱心に聞き入っていた。/ サンはひょっとしたらムーンにとって素晴らしい講師なのかもしれない / ムーンはサンに対して疑問を持ったのかもしれないし、持つはずがないのかもしれない / わたしはスコーンの作り方にはまるで興味がない / サンは持てる技術の全てをムーンに渡そうとしていたのかもしれない / わたしはサンの作るスコーンがおいしいと思う / サンのその教える横顔はとても穏やかで暖かい / ムーンはこの作り方でこれから作っていくのだろうか / ムーンがサンの話をとても真剣に聞く後ろ姿をわたしは見る / 紅茶をわたしは用意する / わたしは自分の小さな世界に展開されるあれこれに思わず泣きそうになる。