Herbal tea day 15

15th day。一つのサイクルが終わったってことは、また次が始まるということ。

herbal tea day 3

3rd day。ガラスを通して見えるのは。
朝早くにまるでスコールのような雨が降る。水気を含んだひんやりした風が窓から入ってくる。すっかり冷えて、お茶をそそくさと入れる。
湯気の湿度に雨の湿度。
みずみずしく花が咲いている。
水たまりには虹が映る。
お茶の中では水の玉が踊る。

it’s raining

うたた寝の上にふんわり乗っかってくるのは、雨の匂い。

needlework

窓辺の明るいところに座って針を動かしている。夕焼けで部屋が眩しく真っ赤になる間だけは少し休憩をして、暗くなったらまた針を動かす。

water in the sun and the moon

湖から満月の水を汲んできて(夜ずっと月が空にある日の)月の光を一晩中浴びさせ、そのまま朝上ってきた日の光も浴びさせる(お昼は越さないように)。体の中に入れるには少しパワフル過ぎるから、顔や手を洗う、それくらいまで。水は小瓶に分けて玄関や窓際など、外からの出入りがあるところに置いておく。ちょっとしたバリア。

sunset in my town

屋根に登ると街を見渡せる。いちばん高い市庁舎といちばん大きな教会を目印にたどるのがわかりやすい。市庁舎のある通りと川沿いの道の三叉路にあるパン屋は、もうずっとわたしの朝ごはんのための。ここのパンを買いに行くためにわたしは朝まで起きている(屋根から見る夜明けの美しいことと言ったら!)。教会の前の広場からいくつものびる小さな道のうち、アンティークショップが並ぶちょっと密やかで細い道には、秘密の店。外からは普通の家にしか見えないけれど、実はとっておきの果実酒が置いてある。お酒の飲めないわたしもここの果実酒だけは飲めるという不思議。最近長旅から帰ってきたMr.ColorとMrs.Colorの家はさっきのパン屋のある川沿いの並びに。彼らは世界中から集めてきたものを売るだけでなく、あちこちで食べてきたものを彼らなりに再現する食堂もやっているのだ。

looking into

よーくのぞいてみると、見えてくるものがある。
隠れていた小さな友だち、小さなわたし。

Snow on the

久しぶりに雪が降った。
昨晩空に小さなお願いをしたので、おそらく、これは空からの返事。

大きな粒の雪は静かにテラスを白く覆っていった。窓から入ってくる風は部屋を冷気で満たしていった。目の前はどんどん冷たく雪色になり、境界はだんだん曖昧になっていった。
わたしは昨日から熱を出していて、体中に重くのしかかる痛みとだるさを抱えて布団の中にいた。ほとんど働かない頭と動かすのにひと苦労する体に、完全に取り込まれていた。
時間も空間もぼやけて自分の感覚もつかめない中、温かい額に時折雪が降ってきた。それはひんやりと気持ちよく、溶けずに熱だけ奪いふっと消えた。渇いた唇にも雪が降ってきた。冷たくほんの少し甘い雪は喉を潤した。
そしてこのところずっとわたしを包み込み、出入りを止め、身動きをさせてくれなかった大きな暗雲、黒くどんよりした雲には、部屋にすっかり積もってしまった雪がとてつもなく強い吹雪を起こした。吹雪はぐるぐると雲を渦巻き、天井高く上がり、ぎゅっと一瞬縮こまったかと思うと雲を捕らえたまま窓から飛び出し、消え去っていった。

吹雪になった時、雪はものすごく恐ろしい顔をしていた。

morning and midnight

夕暮れ、1日が積み重なった濁りで随分と見通しが悪くなった街の中、歩くのは少々息苦しく部屋までの道は長かった。これからもう少し、街はさらにその密度を上げる。

Mr.Color Mrs.Color vol.2

Mr.ColorとMrs.Colorに3年会わない間、一番変わっていたことといえば、彼らの間に赤ちゃんが生まれていたこと。

herbal tea day 7

7th day。まだ飲んでみたいなと思うけれど、ひとまず今日でこのブレンドはおわり。明日は朝が早い。少し遠出をするからだ。水筒に新しくはじまるお茶とちょっとしたつまむものを作ったら、夜が明けるか明けないくらいに出発する。旅の相棒はカタツムリ、どれだけ早く出ても早過ぎることはない。

Mr. color Mrs. color

Mr.Color と Mrs.Color が明日うちにやって来る。彼らに会うのはおよそ3年ぶり。長い長い船旅を終え、世界中からいろんなものを集めて、彼らはこの町に帰ってくる。

new moon in May 2020

New Moon in May 2020

‘ her standard ’

Bishop’s weed

目を瞑ってじっとしていると、木々の揺れる音が聞こえた。それは風にそよいでいて、リズムよく鳴っている。少しだけ歩みを進めてみることにした。

foggy morning

霧で見えない朝。街はまだまだ目を覚ましそうにない。圧倒的に湿った空気の中にチラと潜むひんやりするものをつかまえて、それと一緒に完熟の果物を。

cake and tea

「これ、好物でしょう…?」と言って、小さな箱を持って店に入ってきたのは、三軒隣に住むマダム。彼女はここに置いてあるものを面白がっていて、ちょこちょこ選んでは持って帰ってくれる。わたしと同じく長い間一人で暮らしているみたいだけど、いまだに何をしているのかよく知らない。ただ時々その家に見知らぬ人が出入りしているのを見かけるが…、それだけであとはなにもわからない。でも彼女が話さないのなら別に聞こうとは思わないし、彼女もわたしのことを何にも聞いてこないから。お互いに目の前にある事実だけで十分ということなのだ。

sewing box

“繕い箱”。思い出を繕う道具の箱。
できることなら切ってしまいたいところや、変えたい色、ほどいた方がいいに違いない下手な繕い、もう一度聞き直したい作り方。

reading book at night

ベッドに持って入るのは誰かの食べ物日記。明日何を食べようか頭に浮かべながら眠る。

dark chocolate

机の上に散らかっている作業がひと段落ついたので、椅子から立ち上がり、棚の上に置いてあるポットから熱いお茶をカップに注いだ。そしてその横のアンティークの小さな皿に並ぶチョコレートをひとかけら手に取った。チョコレートはココナッツシュガーの甘さ。それ以外は限りなくビター。カップのお茶をひと口飲む。今朝作ったブレンドは草の風味がやや強めで、ふっと身体を鮮やかにした。それはちょうど今の季節のような。お茶とチョコレートで少し緩んだらそのままソファに倒れ込む。新しくカバーを夏用に替えた。触れるとその張りに嬉しくなる。オレンジ色に変わりつつある光とちょうど気持ちのいい程度の風、教会の鐘が、時計のないこの部屋に時間を知らせてくれる。

sunset

夕焼けの色が少しずつ変わっていく。暑い湿った季節がところどころに現れ始めているということ。風はまだひんやりとしているが、匂いはすでにのびのびしている。