Snow on the

久しぶりに雪が降った。
昨晩空に小さなお願いをしたので、おそらく、これは空からの返事。

大きな粒の雪は静かにテラスを白く覆っていった。窓から入ってくる風は部屋を冷気で満たしていった。目の前はどんどん冷たく雪色になり、境界はだんだん曖昧になっていった。
わたしは昨日から熱を出していて、体中に重くのしかかる痛みとだるさを抱えて布団の中にいた。ほとんど働かない頭と動かすのにひと苦労する体に、完全に取り込まれていた。
時間も空間もぼやけて自分の感覚もつかめない中、温かい額に時折雪が降ってきた。それはひんやりと気持ちよく、溶けずに熱だけ奪いふっと消えた。渇いた唇にも雪が降ってきた。冷たくほんの少し甘い雪は喉を潤した。
そしてこのところずっとわたしを包み込み、出入りを止め、身動きをさせてくれなかった大きな暗雲、黒くどんよりした雲には、部屋にすっかり積もってしまった雪がとてつもなく強い吹雪を起こした。吹雪はぐるぐると雲を渦巻き、天井高く上がり、ぎゅっと一瞬縮こまったかと思うと雲を捕らえたまま窓から飛び出し、消え去っていった。

吹雪になった時、雪はものすごく恐ろしい顔をしていた。