
レモングラスの育て方を学ぶ:
後ろの席に座るメアリーから背中をつつかれ、先生の目を盗んで手紙を渡される。かわいくハート形に折られたそれには「メアリー、ジェーン、シエナ、ライラとゾーイだけ読んでもいいよ、ローズより」と書かれている。わたしは伝書鳩の役目を忠実に果たして、前の席に座るライラにそれをそっと渡す。

レモングラスの育て方を学ぶ:
後ろの席に座るメアリーから背中をつつかれ、先生の目を盗んで手紙を渡される。かわいくハート形に折られたそれには「メアリー、ジェーン、シエナ、ライラとゾーイだけ読んでもいいよ、ローズより」と書かれている。わたしは伝書鳩の役目を忠実に果たして、前の席に座るライラにそれをそっと渡す。


囚われの身になった場合:
「天使をつかまえたから、見においでよ」とお茶会に誘われる。そこで目にしたのは、確かに羽を持った小さな人のような存在だった。閉じ込められたその様子に「なんてことを…」と気分が悪くなったのだけれど、その言葉は口に出さずにいた。ただ不思議だったのは、その羽の生えた小さな存在はほんのりと笑みを浮かべていて、そしてふんわりと揺れて軽やかで、そう、とてもその状況を嘆いているふうには見えなかったこと。ああ、天使がなぜ天使なのか。その所以を垣間見た気がしたのは、おそらくわたしの勘違いではないだろう。
今日も泳いでいます。割と長い時間泳いでいると思います。時折、水の中で丸くなったり、また浮かんではぼんやりしてみたりしながら。耳に水の動きを聴かせています。そして肌に水の動きを触れさせています。そうすると落ち着くのです。

久しぶりに話を聞きに行った。珍しい音楽が届いたという。わたしは楽譜を見ただけでは、なんのことだかさっぱりだったが、彼女に言わせると、それはそれは壮大で、複雑、かなり真っ当な、豊かすぎる優しさに満ちあふれているそうだ(まったく意味不明の説明である)。音楽はわからなかったけれど、ただその楽譜はもらうことにした。その佇まいが気に入ったから。そして家に帰って、そのままそれを部屋の壁に貼ってみた。そうするとまず、花瓶の中の枯れかけていた花の色が、再び鮮やかになった。つぎに、置いてあったパンをかじると、甘みが増していた。おまけに窓際には鳥たちが集まってきて、賑やかにお喋りしだした。音がないとわからないのはわたしだけってことだった。

返事待ち:
メッセージを書き込みました。色のない鉛筆で、ふと開かれたページの、ほんの隙間。どうか、それを見つけて、そしてそのお返事、もらえないでしょうか?
コンロの火を止めたら、鳥の鳴き声が聞こえてきて、ああ、雨が止んだのだな、と思う。朝から静かだった外は、少しずつ動きを取り戻す。あとちょっとだけ時を止めたくて、お茶を入れることにする。
新しいアイロン台が来て、わたしはそれがとてもうれしいから、何枚も何枚もシャツをアイロンがけする。

黒のしっぽ
黒い大きな蝶は、次から次へと花を移って蜜を吸っていた。静かな音、小さな羽ばたき。わたしはチョコレートのかかったアイスをほおばっていた。ナッツの大きさ、バニラの甘さ。
管理人さんは昨晩から寝込んでいるらしく、ちいさな彼女も今日はまったく見かけていない。次晴れたらみんなで料理教室をしよう、と言っていたのに。太陽がまぶしい。

いい香りの湯気を出すお茶を、うらめしそうに彼女が眺めている。
次は自分の番?と、もう長い間待ってくれているのだけれど、あなたの順番は永遠にやってこないのだよ。
昨日届いたお菓子は、我慢できずにこっそり先に食べてしまった。
ごめんね。
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今朝食べたいちじくはけっこう硬くて、味がほとんどしませんでした。窓を開けているのはどうかと思うくらいに強い風と、彼女が部屋の隅に隠れてしまうくらいにぎやかな公園と、かなり日差しの強い太陽の組み合わせは、どれもこれもがチグハグで、ちょうど今の時期をそのまま現しているようだと思ったのでした。
(net_sc_day 19)目が覚めたら、雪がしっかり積もっていた。居ない間に届いた手紙はなかった。そうだな、自分とお話ししようかな。

(net_sc_day 18)冬の入り口に帰ってきた。長い間バスの中で眠っていたので、夜が明けたのか、それともこれから日が暮れようとしているのか、わからなかった。読みかけの本が床に落ちてしまっていたが、物語の続きは、もう夢の中で見てしまった。馴染みの景色は塗り替えられ、さらにぎゅうぎゅうになったトランクの中には新しい仲間もいた。まずとりあえずベッドに潜り込む。そして気がすむまでそこにいることにする。
(net_sc_day 17)霧がとても濃くて、水の中にいるようだった。髪は濡れて、着ている服も濡れた。せっかく高いところに来たけれど、景色は何も見えなかった。ただただ周りを白く細かい粒が流れていった。当然寒くて、こんな格好で来たことを後悔したけれど、でも半分は、今だけの冷たさを思う存分味わううれしさで満ちていた。

(net_sc_day 16)街はとてもゆっくり動いていて、自分の時間が普段いかに速いのか、あらためて気づく。わたしの時間は、速度があって、おまけにごちゃごちゃとしていた。なのに空っぽだった。ここは静かで、ずっしりと骨太で、車の走る音にすらも、何かひとつの表れのようなものを感じた。夜は街外れにある小さなホットドッグスタンドに人が集まった。ごく普通のホットドッグなのに、それはとびきりおいしかった。
(net_sc_day 15)木陰もちょっとした建物もなく、休むところもないままに、延々と太陽に照らされながら歩いた。暑いのはとても苦手なので、ちっとも楽しくなかった。バスに乗ろうかと思ったけれど、バス停の時刻表では次に来るのは数時間後だった。どこまで来たのだろう。よくわからないまま、行き先は、彼女に渡された手紙の住所から。

(net_sc_day 14)行く先々でもらうのは、旅の粒。それは、道標みたいなもので、たとえば「次の場所はここだよ」のようなちょっとしたアドバイスをくれたりするのだけれど、わたしはその粒をあまり確かめることもせずに、ポンとそこらへんに置いておいたり、またパクッと食べてしまったりしてしまう。
(net_sc_day 13)ホテルの窓から見える景色は、緑だけ。控えめに植えてある小さな木と、自然な感じの芝生、ところどころ苔。今日は気温も湿度も高いから、外に出るのは日が暮れてから。自転車を思い切り飛ばして、海まで行ってみることにする。

(net_sc_day 12)また、ここに来た。ちゃんと順路通りに歩いているはずなのに、気がつけば、さっきいた場所に再び戻っていた。もうこの写真を見るのは果たして今日何度目か。誰かに出口を聞きたかったけど、しかしひょっとしたら、わたしがわざわざ選んで、この写真を見るためにぐるぐる同じところをまわっているのかもしれなかった。