long time no see

久しぶりに話を聞きに行った。珍しい音楽が届いたという。わたしは楽譜を見ただけでは、なんのことだかさっぱりだったが、彼女に言わせると、それはそれは壮大で、複雑、かなり真っ当な、豊かすぎる優しさに満ちあふれているそうだ(まったく意味不明の説明である)。音楽はわからなかったけれど、ただその楽譜はもらうことにした。その佇まいが気に入ったから。そして家に帰って、そのままそれを部屋の壁に貼ってみた。そうするとまず、花瓶の中の枯れかけていた花の色が、再び鮮やかになった。つぎに、置いてあったパンをかじると、甘みが増していた。おまけに窓際には鳥たちが集まってきて、賑やかにお喋りしだした。音がないとわからないのはわたしだけってことだった。