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久しぶりに帰ってくる彼女には、ケーキを用意していた。長い時間電車に揺られてさぞかし疲れたでしょう、なにか飲み物をいれましょうか、尋ねてはみたものの、それに返事がくることもなく、彼女は椅子に座ったまま居眠りしていた。大きなトランクは玄関に置かれたままだった。ブーツはその辺に脱ぎ捨てられていた。ベッドに促そうか…とも思ったけれど、起こすのはちょっと躊躇した。