思いかけず大きな月に出会って驚く。まだそれは出て間もなかった。わたしは手紙を出すためにこんな遅い時間に外へ出た。街は静かというわけではなく、たまに営みの音が横を通り過ぎていった。誰かがつけていった灯りもちらほらあったりして、暖かさもあった。ただしかしその大きな月と向かい合っているとどうしてもこの世界に自分一人だけのような気にさせられた。かなり控えめだけど絶えず動きのあるこの街の中で、いつもより大きく微動だにしない(ほんとうは動いているのに)目の前にある存在を前に今夜は萎縮した。そうなるともうなんだか居ても立っても居られなくなって、手紙を出さずに家に帰ることにした。