遅い手紙

ポストに入りきらないからと、郵便屋さんが持ってこられた手紙の束、ああ、ひさしぶりの水仙さんだ。永遠に旅をし続けている彼は行く先々からその時のことを記したものを送ってくれるけれど、なぜかいつもまとめて投函するらしく、わたしのもとにはこんなふうに分厚い束となって届く。どの手紙にも日付も場所も書かれていないから、いったいいつ、どこに、どんな道のりで旅しているのか、まるで想像がつかない。多分水仙さんにとってそういうことはどうだっていいのだろう。はじまりもおわりもそして行き先もない旅には、時間や場所なんてものはそんなに大事なことでないのだから。