20240917

バスはサービスエリアに入った。日が暮れて間もないパーキングは薄暗くすべての境界が曖昧で、コンビニの灯り、トイレの看板…、そのほかはもうよくわからなかった。遠くに見えているのはひょっとしたら山かもしれなかったし、雲かもしれなかった。休憩は15分です、と運転手がマイクで言った。さっきまで眠っていたわたしはまだ半分寝ぼけていて、降りるかどうしようか、窓の外を眺めながらぼんやり考える。目に映る景色はやっぱりおぼろげだった。おそらく外の空気はとても冷たくはっきりしていて、目が覚めるくらいにクリアだろう、それくらいは想像できた。温かいコーヒーを買いに、バスの階段を降りてもよかった。でもわたしは、そうしなかった。まだ、もう少し、見えたくなかった。太陽が沈んだせいにしたけれど、自分が目を開けたくなかった。クッションの悪いバスの席から見える外の風景は、生暖かく、緩んでいて、あまりきれいだとは言えないのかもしれなかった。ただそこはとても居心地がいいものだった。わたしは再び席にもたれかかって、もう一度目を瞑った。