
クロスワード・パズルを解きながら、わたしたちはお互いにそのキーワードについて思いつく話をしていった。わたしの話はなんのオチもなくガッカリするくらいつまらない小話だったが、彼女の話はひとつひとつがとても長く、そしてそれらは必ずと言っていいほど何かしらの悩み事に繋がっていくものだった。途中ハンバーガーとアイスティーが運ばれてきたけれど、お構いなしに彼女は話し続け、そのままランチは置き去りに、しかしパズルのマスはどんどん埋められていった。現れてくる言葉に一喜一憂し、気持ちの行ったり来たりを繰り返す、結論の出ない堂々巡りをしながら、もう何も書き込むところがないパズルが出来上がった時ですら、彼女は嘆いていた。
すっかり冷たくなってしまったハンバーガーは塩気が強く感じられるしょっぱいもので、氷が溶けてぬるくなってしまったアイスティーはぼんやりと味気なかった。しかしわたしは硬めのハンバーガーだって好きだし、それはそれで味わうものでもあった。揺れ動く彼女の振り幅ゆえに、わたしは彼女と交わることができた。彼女の話は、わたしの話でもあった。彼女の不完全さは多くのものを受け入れ、その中にはわたしもいた。その広い海の中では、誰もがあたたかく泳ぐことができた。
ただ彼女だけが、それを知らないのだった。